依存症および大人の発達障害を専門とする静岡市の心療内科・精神科

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マリアの丘クリニック

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ギャンブル依存症対策

ギャンブル依存症対策

ギャンブル依存症の対策を考える上で重要なことは、なぜギャンブル依存症になってしまったかについて考えることです。

当事者は「ストレスからギャンブルにのめり込んだ」と言い訳しがちですが本当にそれだけでしょうか。ギャンブル依存症とストレスはある程度関係がありますが、ストレスが多い人が皆ギャンブル依存症になる訳ではないので、他にも重要な関係因子があると考えられます。

それは、①ADHDとギャンブル依存症の関係性、②遅延報酬障害とギャンブル依存症の関係性です。以下にそれらについて解説します。

①当院を受診したギャンブル依存症者の約3分の1にADHDが認められました。ADHDの病態として、先天的に脳内報酬系の感受性低下および遅延報酬障害があることが分かっています。

遅延報酬障害とは、将来もらえる大きな報酬よりも、すぐにもらえる報酬を選んでしまうことです。分かりやすく例をあげると、今すぐに10万円がもらえる場合と5年後に100万円がもらえる場合、どちらを選択するかという課題です(金額の大小は個人差があるので、あくまでそういうイメージとしてとらえて下さい)。別の表現をすると、遅延報酬障害とは、コツコツ積み立てをするのを好まず、一発大当たりを求めてしまうという傾向です。

ADHDを有する人は、遅延報酬障害があるため、目の前の10万円を選ぶ人が多いのです。ギャンブルは、目の前のお金を取りに行く行為であり、遅延報酬とは正反対の即時報酬が得られるため、ADHDを有するひとはギャンブル依存症になりやすいと考えられます。その場合はADHDの治療を受けることで、ギャンブル依存症も回復に向かう可能性があります。

②それでは、ADHDではない残り3分の2の人の場合はどうでしょうか。私は数多くのギャンブル依存症者を診る中で、あることに気が付きました。

それは、ADHDを有しないギャンブル依存症者の特徴は、非常に「冷めている」ことです。喜怒哀楽が少なく、何事にも淡々としている人が多いのです。

しかし、そういう人たちでも、やはりほとんどの場合、遅延報酬障害は認められます。その場合は、ギャンブルにのめり込む過程で、脳内報酬系が強い刺激に晒され続けて後天的に遅延報酬障害が生じ、即時報酬を求めるようになり、結果としてギャンブル依存症まで発展してしまったと推測されます。

日常生活の中で、貯金をして家族で旅行に行って楽しかった、仕事を地道に頑張り成果を上げた、それ位では脳内報酬系が刺激されず、幸福感を感じられなくなってしまっているのです。そういうケースでは以下に述べる「森田療法」または「認知行動療法」が有効であると私は考えます。

 

ギャンブル依存症に対する古くて新しい治療「森田療法」

私が医大を卒業し精神科医となったとき、師事したのは、故・大原健士郎先生でした。大原先生は森田療法が専門で、私も精神科一年目から森田療法を学びました。

森田療法は、森田正馬先生(1874-1938)が大正時代に、もともとは神経症の治療法として編み出したものです。森田療法は、大正時代や昭和の中期までは主に入院治療によるものでしたが、現在は外来治療において多く実施されています。そのエッセンスは一言でいうと、「症状はあるがままに受け入れた上で、日々、気分本位でなく目的本位の生活を送る」というものです。その理念は、神経症だけでなく依存症の治療にも応用可能です。私が考える、ギャンブル依存症に対する森田療法の応用法を以下に述べます。

ギャンブル依存症になると、上述のように遅延報酬障害が生ずるため、目の前のお金を取りにいきがちです。また、脳内報酬系にギャンブルで大勝した時の快感が記憶されています。ギャンブルをしたいという気持ちを完全に消すことは、残念ながら一生出来ません。

そのことは「あるがまま」に受け入れる必要があります。しかし、その気持ちにしたがって、ギャンブルをしてしまうのは「気分本位」でギャンブルの罠から抜け出せません。

日々の生活において、誰しもギャンブルとは違う目的があるはずです。お金の面においても、コツコツと働く方が、ギャンブルをするより、結果的に大きな報酬を得られることは明白です。

その目的を果たせるよう日々を過ごすのです。それが「目的本位」の生活です。「今日一日」を「目的本位」に過ごす、その繰り返しこそが地道ですが、ギャンブル依存症から脱却する最も近道であると私は考えています。

 

ギャンブル依存症に対する新たな認知行動療法

これまで当院ではギャンブル依存症に対する認知行動療法を、海外で作成されたワークブック(ギャンブル障害の治療 ー認知行動療法によるアプローチー 星和書店発行)や、わが国で作成されたSAT-Gなどを用いて行っていました。

しかし、やはりそれだけでは効果不十分で、スリップ(再びギャンブルをしてしまうこと)する方が数多くいました。何がいけないのかとずっと考えてきましたが、多くの患者さんと話すうちに、次のようなことに気が付きました。

ギャンブル依存症者は基本的に「すぐに儲けたい」という気持ちが他人より強く(すなわち即時報酬を求める傾向が強く)、自分が依存症かもしれないと認めた後も、「でも、今日はギャンブルで勝てるかもしれない、勝てそうだ」と考える方が多いのです。

なぜそのような心境に至るのか考えたところ、確率・統計論を正しく理解していない人が多いということにも気が付きました。(確率・統計論にかなり詳しくても、落とし穴に気が付いていない方も多いです)

それが分かってから、当院では、認知行動療法の一環として、確率・統計論の学習を取り入れることにしました。その中から、実際の例を一つ示します。

「3枚のコインがある。1枚は両面とも黒、1枚は両面とも白、そして残り1枚は一方の面が黒でもう一方が白。いま、このコインを袋の中に入れ、よく振ってかき混ぜ、1枚を取り出して、机の上に置いたところ、その見えている面は黒であった。さて、このコインの裏が黒である確率はどれくらいか?」という問題を患者さんに出して、答えてもらいます。

多くの方が50%と答えますが、それは間違っています。ギャンブルには、そのような人を欺く巧妙な罠が隠されているものも多くあります。それらを正しく認識することで、ギャンブルですぐに儲けようという気持ちはかなり失せます。即時報酬を求めると落とし穴に陥りやすいけれども、じっくり冷静にかつ論理的に考えれば、遅延報酬の方がはるかに効率がよいことに気付くと思います。

 

ギャンブル依存症に対する条件反射制御法

わが国で開発された依存症の治療法の一つに条件反射制御法があります。その理論はとてもユニークなもので、様々な依存症を「条件反射」で説明しようとするものです。

詳しい説明は省きますが、治療の実際の方法は次のようなものです。例えば、スロット依存症の人に連日、病院やクリニック内でスロット台を打たせるという方法です。

スロット台は医療機関が購入したもので、ビッグボーナスが続くとコインが大量に出ますが、当然換金はできませんし、景品にも交換できません。単にコインがたくさん出たという事実が残るのみです。

これを繰り返すとスロットをしたいという欲求が減少します(実際には、単にそのスロット台を打つだけでなく、それ以前の条件付けされている状況をイメージしたり、キーワードアクションという動作をするなど様々な約束事があります)。

この治療効果は、条件反射制御理論だけでなく、上述の即時報酬と遅延報酬の関係でもうまく説明できます。

スロットを連日打ってコインを大量に獲得しても換金できないわけですから、即時報酬は全く得られません。それではなぜその行為を繰り返すかというと、ギャンブル依存症から脱却するのが目的です。それはすぐに達成できるわけではないので、遅延報酬にあたるわけです。

連日、金にならないスロットを黙々と打つことで、脳をギャンブル依存症になる前の状態、即時報酬だけでなく遅延報酬を求める状態に戻すことが出来る可能性があるのです。

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